- 大規模災害は、人々の生活基盤を一瞬で奪い、深刻な心理的ストレスをもたらす。日本では阪神・淡路大震災以降、こうした心のダメージを抱えた被災者に対するメンタルケアの重要性が広く認識されるようになった。内閣府や厚生労働省が指針を策定し、これまでに災害派遣精神医療チーム(DPAT: Disaster Psychiatric Assistance Team)やPsychological First Aidなどの初期支援体制が構築されてきた。一方、被災者の心理的苦悩はしばしば長期間に及ぶため、復興に至るまでの中長期的な支援体制の確立が求められている。本講演では、被災から復興に至るまでの心理的変化の特徴と、本邦におけるメンタルケアの取り組みについて、能登半島地震における具体例を交えて紹介する。